歯医者さんで、良くレントゲンの写真を撮られるけれど、
体には影響は無いのかな? 大丈夫かな?
そんな風に思ってしまうことってありますよね。
今回は、そのレントゲン写真のお話をしようと思います。
レントゲン写真のお話・1 レントゲン写真を撮る理由 X線を使うわけ X線の胎児へのリスク ちょこっとマメ知識 Gy(グレイ)って何? 医療被曝の確率的影響 検査で受ける放射線の量 ちょこっとマメ知識 Sv(シーベルト)って何? |
レントゲン写真のお話・2 X線とはどんなものなのでしょう? 自然放射線(能) 放射線が細胞に影響を及ぼす仕組み 胎児期の被爆の影響 |
レントゲンのお話・3 ちょこっとマメ知識・色々な検査の種類 X線を使った検査法 CT マンモグラフィ 核医学検査(RI検査) IVR X線を使わない検査法 MRI(5/12) |
レントゲン写真を撮る理由 |
歯医者さんで治す病気といえば、 まず第一に「ムシ歯」ですよね。 それから「歯周病」もすぐに思い当たる病気の1つだと思います。 歯を抜くというのもありますね。 他にも、顎が痛かったり口が開かなくなったりという「顎関節症」。 歯並びが悪い「歯列不正」や、 喧嘩して顎の骨を折った…なんていうのまで歯科口腔外科では扱います。 骨折やヒビは、一般歯科ではかなり珍しいケースですが、 その他の症状は馴染みの深い症状です。 皆様もご存知の通り、歯というのは顎の骨の中に根っこが埋まっています。 その上に歯肉がかぶさっているので、 歯の頭だけが目に見える場所に出ているという状態です。 ムシ歯にしても、歯は硬い組織で出来ているので、 中がどうなっているのか、外からは分かりません。 そこで、骨の中の様子まで分かるX線を使う必要がでてくるのです。 |
X線を使うわけ |
X線を利用しない検査の方法はいっぱいあるじゃないか。 そう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。 でも、歯の治療でX線(レントゲン)写真を撮るには意味があるのです。 内科や産婦人科で良く使われている「超音波検査」は、 超音波を使用しているので被爆の問題はありませんが、 超音波は骨や空気の中を通れないので歯科の検査には役にたちません。 「MRI」は磁気を利用した検査法で、これも被爆の問題はありません。 でも、骨の中の病気は見えるのですが、歯の中の様子までは見られません。 「CT」は画像を得る手段にX線を使用していますが、 体を輪切りにして撮影するのが得意なので、 ムシ歯などを見るのには適していません。 X線は物質を透過する性質を持っています。 通り抜けるX線の量は、構造物の吸収の差によっても異なるので、 その強弱を画像にしてとらえることができるのです。 たとえば、外見からはムシ歯が無いように見えるのに実は歯の中に穴が出来ていた場合、 レントゲン写真を見ると、穴が開いているのが分かるということになります。 歯の根っこの先に、膿が溜まっているときなども、 そこだけ骨が無くなっているのが写真に写ります。 これが歯科治療をする時にX線(レントゲン)撮影を使う訳なのです。 |
X線の胎児へのリスク |
X線というのは、放射線の仲間の1つなので、 まったく危険が無いとは言い切れません。 ただ、歯医者さんで撮るレントゲン写真のリスクはかなり低く、 妊娠しているお母さんのお腹の子供が流産してしまったり、 奇形になってしまったりという確定的影響は無いといわれています。 X線被爆による人体への影響には、 「確定的影響」と「確率的影響」があります。 (確率的影響は、後でご説明します) 確定的影響というのは、 一定の被爆線量を超えなければ絶対に起こらない影響を言います。 その越えてはいけない線量を「しきい値」といいます。 流産や奇形のしきい値は0.1Gy(グレイ)です。 0.1Gy(グレイ)を越えなければ、胎児の流産や奇形は起きないということになります。 口の中にフィルムを入れて撮る小さなレントゲン写真の場合、 卵巣の被爆は0.079μGy(マイクログレイ)だそうです。 大きなレントゲン写真(パノラマ写真)の場合でも、56μGyです。 1μGy(マイクログレイ)は、1Gy(グレイ)の百万分の一になります。 ということは、100万回位、歯医者さんで小さなレントゲンを撮ると危険…というところでしょうか。 現実ではまずありえない回数ですよね。 ただ、いくら大丈夫だと言われたとしても、 やっぱりお母さんとしてはお腹の中のお子さんが気になってしまいますよね。 どんな歯医者さん(歯科医院)でも、 妊婦の方のレントゲン撮影は基本的にはしていないと思います。 たとえレントゲンを撮るとしても、防護服を着るようになっているはずです。 防護服は、鉛が中に入っているのでX線を通さないようになっています。 …というわけで、万が一、歯医者さんでレントゲンを撮らなければならなくなってしまったとしても、 あまり心配なさらないようにしてくださいね。 |
ちょこっとマメ知識 Gy(グレイ)って何? |
さて。馴染みの無い単位が沢山出てきましたね。 簡単に出てきた単位の説明をすることにします。 Gy(グレイ)というのは放射線の吸収線量の単位のことで、 放射線場に置かれた物質が単位質量あたりに吸収した放射線エネルギーのことになります。 発生したエネルギー(温度上昇)で計測するそうです。 吸収された放射線のエネルギーが1kgあたり1J(ジュール)だった場合、 1J/Kgとなり、1Gyと表されます。 従来は、rad(ラド)という単位が用いられていましたが、現在ではGy(グレイ)を用いています。 ちなみに、 放射線の通過により注目物質1g中に100erg(エルグ)吸収されることを1radと表していました。 1Gy=100radとなっています。 J(ジュール)は、吸収線量の単位のことで、 単位質量(Kg)の物質に吸収された放射線のエネルギーを表しています。 この単位につけられた呼び名が、Gy(グレイ)なのです。 1Gyは1J/Kgのエネルギー吸収に相当します。 |
医療被曝の確率的影響 |
医療被曝というのは、医療の場において、 患者が自分自身の疾病の診療目的で受ける放射線による被爆をいいます。 「被爆」なんていうと、怖いイメージがすぐに湧いてきてしまいますよね。 でも、レントゲンやCTなどの検査も「被爆」したことになってしまうんです。 じゃぁ、大変じゃないか! 検査するのも危ないじゃないか!! …って思ってしまうかもしれませんね。 胎児へのリスクの時にもお話しましたが、 一番X線の影響を受けやすいといわれている胎児に対しても、 歯科で撮るレントゲン写真は、ほとんど危険が無いというデータは出ています。 しかし、だからといって、ガンの発生や、 遺伝的影響(胎児になる前の卵子や精子が被爆して起こる奇形)が、 「0である」とは考えられてはいません。 確定的影響のように、しきい値があるわけではなく、 どんなに少量の被爆でも起こるかも知れない影響。 つまり、これが「確率的影響」ということになります。 個人が死に至にいたる確率といえば分かりやすいでしょうか。 子孫に伝わる遺伝的影響や、 被爆したことによって起こるかもしれない白血病や悪性腫瘍などのガンは、 確率的影響に分類されます。 では、どのくらいの危険性があるのでしょうか。 X線撮影による患者様への線量(X線の量)は、 通常ならば短時間内に受けるもので、限られた部位が被爆する形になります。 歯医者さんなら、歯の近辺ということになりますね。 大きなレントゲン写真は、頭のあたりまで、ということになるでしょうか。 そういった普段、普通に撮ることの多い歯科のX線写真。 その1回の撮影で「ガン」や「遺伝的損傷」が起こる確率は… 100万分の1だそうです。 この数値は、飛行機に乗るリスクと同じくらい…ということですので、 基本的にはほとんど問題は無い…と考えて大丈夫なような気がしてきますよね。 |
検査で受ける放射線の量 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
病気の検査や診断で受ける放射線の量がどのくらいなのでしょう。資料提供:放射能医学総合研究所(1994年) 透視というのは、 X線の持つ蛍光作用を利用して、X線像を電気的にテレビ像に変換して観察する方法です。 画像は多少悪いようですが、リアルタイムに観察できる利点があります。 「核医学診断」というのは、2種類に分けられます。 インビボ核医学検査 インビボというのはin vivo、つまり生体内という意味で、 患者の体内に放射性医薬品を投与して、臓器や組織の形態や機能を検査します。 こちらの方が被爆の可能性がありますが、X線検査による被爆線量とほぼ同じ程度だそうです。 インビトロ核医学検査 インビトロはin vitro、生体外という意味です。 患者から採取した血液や尿などの試料と、放射性核種を含む試薬を混ぜて、 その中に含まれるホルモンなどの微量菜物質を調べる検査です。 この検査では被爆することは全くありません。 |
ちょこっとマメ知識 「Sv(シーベルト)」って何? |
Sv(シーベルト)という単位が出てきました。 シーベルトは、 放射線防護の分野で使われる単位です。 実効線量といって、人体が吸収した放射線の影響度を数値化した単位です。 吸収線量(Gy:グレイ)に放射線の種類ごとに定められた係数を乗じて算出します。 以前は「rem:レム」という単位が使用されていました。 1Sv=100remです。 |